Side of BLUE −フタリグラシ− 経費削減、と言うのが今のこのご時世の常で。 余計なところの出費を必要最低限に抑えると言うのは、もう必須項目であることは重々認識しているのだけれども、いざそれを実行しろと言われるとなかなか難しい。 「どうした? まだ決まらないのか?」 横から買い物籠一杯に食器や調理器具を詰め込んだ男が僕の手元を覗き込んでくる。 「……いや、現実の再認識をしていたところだから」 「俺は水色の方が好きだぞ」 「僕は赤の方が好きなんだ」 「じゃあ赤と水色にすればいいじゃないか。何を迷う」 「……それじゃデザインがち……」 「なら青で妥協しておく。ほら、まだ買うものはあるんだ早くしろよ」 さっと、僕が持っていた赤いカップを取り上げ、ついでに青いのを籠に入れて行ってしまう。僕は慌ててその背中を追いかけた。 「重いだろ? 半分持つよ」 「重いものは持たせない主義なんだ。お前はタオルでも持ってくれればそれでいい」 あっさりと返され、言葉をなくして僕は俯く。……顔から火が出るかと思った。 「ほら、行くぞ」 手を差し出され、僕は少しだけ迷ってその手を握り返した。 僕は有栖川忍。今年から大学生になる。だから、と言うわけでもないのだけれど親元を離れてマンションで一人暮らしをしよう、と思ったら親からの許可が下りなかった。 曰く、一人じゃ心配。だそうだ。ので、春から同じ大学に通うことになっている土岐……中学校からの付き合いの土岐綾一郎と同居せざるを得なくなった。 僕らが住むのは2LDKのマンションで、当然食器も何もない。ので、今日は買い物に来ているのだけれども、来ている先が百円ショップなのだ。 自慢じゃないが僕は今日初めてこういう場所に来た。百円の割には結構何でもあって、僕はびっくりしていた。 「疲れたか?」 明らかに僕よりも重い荷物を持っている土岐にこう尋ねられて、僕は素直に頷くことが出来なかった。 確かに朝からずっと買い物のし通しで足が棒のようになっているけれど、土岐は汗一つかいていない。 たいした重量もないものしか持っていない僕が弱音を吐くのはなんか気が引けた。 「土岐の方が疲れてるだろ? だから持つって言ってるのに」 「気にするな。こんなことなら車で来ればよかったな。しの、本当に大丈夫か? 買い物の続きは明日だっていいんだぞ」 「そうだね……。今日はこれぐらいにしておこうか」 「……疲れたなら最初から素直にそう言えばいいんだ。な?」 優しく頭を叩かれて、今度は素直に頷いた。 「はっくしゅん」 春先とは言えまだ夜は冷える。フローリングで荷物の整理をしていた僕は盛大なくしゃみをしてしまった。 「シャワーを浴びたら冷えないうちに早く寝ろって言わなかったか?」 後ろから土岐に抱きつかれて、僕は声にならない悲鳴を上げる。 「な……いつ……出て……」 「今。こんなに身体冷やして風邪ひいたらどうするんだ?」 耳元で囁きながら、顎に手をかけられる。 「…………ふっ」 「唇もこんなに冷えて。……暖めてやるよ」 微かに掠れた声が耳朶を打つ。震える身体を、僕は止めることが出来なかった。 「シャワー……浴びたばっか……」 「また二人で浴びればいい」 目を閉じてされるがままになっている間に、土岐の手と唇はどんどん滑り降りていく。 「あ……した、まだ、買い物……」 「時間ならいくらでもある。ここは痛いだろ。どっちのベッドがいい?」 時折生じる甘い痛みに、僕は考えるのが億劫になってくる。 「と……き……」 「俺のベッドだな。……忍」 たまに呼ばれる自分の名前。この声で発音されると、なぜかとても気持ちが良くて、心地良い。 「綾、一、郎」 名前で呼び返すと、彼は少し嬉しそうに笑っていた。 「愛してる」 「……僕もだよ」 |
後書きと言う名の言い訳 |
はい。パソコンの容量を少しでも軽くしようという事で。 本体に入れっぱなしで忘れていたものシリーズを再アップ。 それにしてもラッブラブですねー。自分が書いたと思うと空恐ろしいですね。 話のストックはまだまだあるのですが、続くかどうかは分かりません。 ……新婚ネタ、あっちでやってますしね。 20040310 再アップ20080207 |