与えられた資料を熟読するのは、当たり前だから。 結末は見えている 山のような紙媒体が何らかの規制に引っかからないのかと少し疑問に思うこともあったけれど。 障害となりうる人物、クラスメート、担任、授業担当者。 それぞれのデータを頭に詰め込む作業をしていたのが功を奏したか否かはさておき。 「よろしくね!」 「よろしく」 お団子頭の八千穂明日香。面倒見が良く男女共に好かれる。 元気な子。 生徒会でも執行部でもなんでもない、クラスメートの枠。 「皆守クン!」 連れて行かれた屋上に。 皆守甲太郎。生徒会副会長。 敵対者。 伏せられている事実、恐らく俺の、否転校生の監視者。 頭の中のデータを引きずり出して、対峙する。 漂うラベンダーの香り。彼が依存するもの、アロマ。 「初めまして、皆守君」 俺は君の敵なんです。 いつか必ず戦う相手なんです。 それまでは。 「よろしく」 友達ごっこをしたら、のってくれますか? 「葉佩、具合でも悪いのか?」 「皆守こそ。1時間目から顔を出すのは珍しいね」 「……俺は」 「ごめん、ちょっと保健室に行ってくるよ」 君が君の役目を忘れたとは思えないけれど。 誤解したくなるような優しさを向けられたら、俺は。 君を、倒せなくなってしまうから。