ZZZ 「帰ってきたの遅かったから寝させておいてあげようね」 3LDKバストイレ別の大きなマンションみたいな建物。 『ガーデン』では自主性と協調性を高めるために生徒が3人一組で共同生活を送っている。 参謀やら兵隊やら銃火器やら。それぞれ異なる専攻の生徒がお互いの特性を理解するため。 また一般的な生活も送れるように、という理由に基づいて。 「あ、さ、ごはん、は?」 「あー、一人別なのは淋しいね」 「でも、眠ってるの、起こすの、も」 「だよね。一応声だけかけてみようか」 「う、ん」 昨日から今朝方にかけての夜間訓練で疲労困憊してきた同居人。 半ば意識を飛ばしたままシャワーを浴びてそのまま部屋に直行。 したのが2時間ほど前。 いくら体力と健康が売りのソルジャークラスの生徒でも微妙なラインだ。 「はーないー、メシはどうするー?」 控えめなノックの後に声をかけるがうんともすんとも。 「今日は休養日だし、二度寝しちゃおうか」 「ぅえ?」 「テーブルの上にメモ残して、二度寝しちゃおう。そうしたら皆でブランチ。どう?」 にっこりと笑いかければ、皆で、の部分に納得したらしい大きな両目がきらきらと輝く。 こくこく縦に振られる頭に顔が綻んでしまう。 ああそうだ、どうせなら。 「三橋、俺のとこに来るのと俺が三橋のところにお邪魔するの、どっちが良い?」 与えられているベッドはなぜか皆してキングサイズ。 お陰でこういういたずらを画策することもできる。 これもコミュニケーションをはかる一環、に含まれているのかどうかは謎だが。 「あ、の、もし、ダメじゃ、なかった、ら」 「?」 「一緒、が、良い、です」 恐る恐るの表情で指差されたのはつい先程ノックした扉。 鍵なんて開錠のスキルを身に付けさせられる自分たちにとってはあまり意味のない代物で。 それを理解しているからこそ絶対に嫌なとき以外は寧ろ開けっ放しの状態だ。 「はーないー、お邪魔するよー?」 「お邪魔、しま、す」 案の定開きっぱなしだった部屋に入って、なぜかベッドの端で眠っている花井の。 そのすぐ隣に三橋を並ばせて自分も寝転ぶ。各自で上掛けのタオルケットは持参済みだ。 余裕、ではないが転落する恐れもさほどない。 「起きたら驚くだろうなあ」 「う、ん」 「三橋が提案したって言ったらもっと驚くよ」 「そう、かな」 「でも鍵かかってなかったし。あんまり気にするなよ?」 「う、ん」 もう既に半分以上落ちかけている瞼を必死に持ち上げる三橋の柔らかい髪をそっと撫でて。 「起きたら皆でメシだからな」 「う、ん……おや、すみ、栄口、くん」 さて、部屋の主の第一声は一体なんだろう。