100個で1組のお題 映画100 004:ミツバチのささやき 君が僕を呼んだならば。 たとえ声なき声だったとしても。 僕は必ず、君の元に行くよ。 「俺を呼んだ?」 ちょっとした出来心で罪を犯し、人間界に追放されたとき。 ウサギとネズミの間くらいの小動物の姿にされて、力も封じられていた俺は、生命の危機に瀕した。 物珍しいだとかそういう理由で悪知恵の付いた高校生に売り飛ばされそうになったところを。 「か、えして、下さい」 「何言ってんだよ。こいつは俺らが拾ったんだぜ」 「俺の、です」 「どこにそんな証拠があるってんだよ」 「呼んだら、俺の、ところに、帰って、きます」 この機を逃したら一生逃げる機会はないかもしれない。 そう判断して、俺は彼の言葉に従った。 舌打ちと共に去っていき、姿が見えなくなった途端に彼は俺を解放してくれた。 「もう、大丈夫、だから、ね」 俺の頭にそっと手を乗せて、ふわりと笑った。 その笑顔を見た瞬間に、俺は力が戻ってくるのを感じた。 ありがとう、という素直な感謝の気持ちをもつことが、どうやら決め手だったらしい。 気をつけて、と踵を返した彼の足に俺は飛びついた。 精霊は受けた恩を必ず返す。 「泉、君?」 「……やっぱ、分かるんだなぁ」 「だって、目が、同じ、だよ」 「俺絶対にお前に勝てないな」 三橋が絡まれてたのはこの間俺を捕まえようとしていた高校生たちだ。 好都合。 三橋を傷付けるやつを俺は許さないし、こいつらには借りがあるし。 「精霊がどんだけのもんか、見せてやるよ!」 道中で溺れかけるという不可思議な目にあったこいつらは、もう三橋に手を出そうとはしないだろう。 上出来だ。 が。 「泉、君」 「……またこの姿かよ!」 そういえば人間界で力を使うことは禁じられていた気がする。 せっかく人型に戻れたのに小動物になってしまった。