100個で1組のお題 映画100 014:ピストルと少年 魔銃、イーブルズガンと呼ばれるピストルが秘宝として知られるようになった近年。 銃弾を補充しなくて良いだの、勝手に照準が合うだの好き勝手言われている。 が、その正体は。 「利央、君」 「あーうん分かってるって!」 向こう側が透けて見える少年が、銃を構えた少年の肩の上の辺りでふよふよと浮いている。 ふわふわした髪の毛のその幽霊のような少年が、両腕をそっとガンナーの少年の肩に乗せ、耳元で何事かを囁いている。 「初級連結式! フリーズ!!」 かけ声と共に足が大地に縫い付けられる。 大気中と地面の水分を氷へと変換。 正確に膝から下を凍てつかせたそれは、決して体内の状態を変えるものではないが長い間続けば凍傷にもなる。 敵を一切傷付けず確保するために一般的に用いられる手段ではあるが。 「今どうやって照準を合わせた?」 「部外者に教えるはずないじゃん。なー、廉」 実体を持たないように見える少年がこくりと頷くと、ガンナーの少年は細い腕を掴んで更に腰に腕を回した。 ……実体を持っていないわけでは、ないらしい。 「逃げようとしても無駄だぜー。廉のコントロールは抜群だから」 「そ、んな」 「ま、お迎えが来るまでは見捨てないでいてあげるからさーぁ」 透き通っていた手の甲に唇を落とすと、半透明だった身体が質感を伴ったそれに変わった。 華奢な少年をぎゅうぎゅうと抱きしめ細い首筋に顔を埋める。 ……いい加減にしてくれ。 「精霊捜査官が持っているのは魔銃じゃなくて精霊銃ということか」 「情報引き出そうとしても無駄だって」 スキンシップはだんだん激しくなっていく。 こんな奴に捕まったのかと思うと情けなくて仕方がない。 「りーおー。お前何調子こいてんの?」 「げ、準さん」 「準太、さん」 黒のジャケットの胸元に光る精霊捜査官の徽章。 六角形のそれは、かなり高位の階級に属することを証し立てる。 「人精間協定第十五条、協定外自治区侵入の現行犯で逮捕する」 「うわ良いとこ取りだよ! これだから上司ってのはさー」 「うっさい。利央、フリーズの解除。第二級連結式チェーン発動」 「了解。廉」 再び半透明になっていく少年と、ガンナーの中に現れる精霊銃。 上級捜査官はその脇でアナログな逮捕状ではなく術法による逮捕状を編んでいる。 「初級解除式、デリート、続いて第二級連結式、チェーン!」 薬莢が二つ転がり落ちる間に、大地と繋がれていた足は鎖で結ばれ、両手も鎖でつながれた。 見事な連結式だと感心する間もない。 「ほい、できあがり」 上司らしい奴が編み上げた術法が手から離れ、俺の額に張り付いて。 ああ、高位転送術法だったのか、と。 納得したのは留置場と思しき施設に転送されてから、だった。