100個で1組のお題 映画100 020:欲望の翼 汚れを感じさせぬ純白の翼を持って、俺たちは生まれてくる。 有翼人、ってのが種の名前。半獣とかそんなのと一緒。 真っ白でふわふわだったそれはいつの間にか立派な翼になって。 あるとき、色が、変わる。 「修、ちゃん、羽根、が」 「ああ。最近赤くなってきたんだ」 根元から先に向けて。 うっすらと染まり始めて、だんだんとその色を濃くする。 誰かを意識すると。 恋愛感情を誰かに抱いたその日から、純粋培養の証左は薄れていく。 「きれい、だね」 「そうか?」 「ピンクで、きれい」 「……ありがとな」 尤も俺の場合は心は昔から決まっていて。 翼に色素が沈着するのが遅すぎただけの話で。 「廉はまだ真っ白なままなんだな」 「う……」 「別に良いんじゃないか? 可愛いし」 「か、かわっ」 翼が染まらない代わりに顔が赤くなる。 俺の翼を赤く染めていく、その原動力。 「しゅ、修ちゃんは、誰が、好き、なの?」 反撃してくる愛しい幼なじみの未だ汚れぬ白い羽毛に焦りを感じつつ。 「廉のが赤くなり始めたら教えてやるよ」 ふわふわとした髪を撫でて、誤魔化した。 「ほん、と?」 「俺が約束破ったことあるか?」 「な、い! 約束、だよ?」 「ああ」 絡められた指先の淡い爪の色みたいに。 ゆっくりとその翼を染めるのが俺であることを願った。