世界の中心に愛を叫ぶ 「……これって田島っぽいよねー」 「? どれ?」 「ほら、これ。文庫になったんだって」 参考書コーナーに足を向けるでもなく。 週刊誌でもなく。 目当てはコミックだったのだけれども。 その手前に平積みにされていた文庫本を指差して水谷が言う。 「あー、なんとなくそうかも」 「タイトルだけなんだけどさー、田島ならやりそう」 号泣物だの純愛物だのと銘打たれたそれはもう随分と昔の作品のような。 けれどもそんなに前でもなくて、少し驚いた。 「ああ、でも田島なら『に』じゃないかな」 「に?」 面積からすれば全く違うのだろうけれど。 投げてもらわなきゃ始まらないから、田島の場合。 バッターだから。 「マウンドに向かって叫ぶ感じじゃない?」 「……あー、そーかも。うん、『で』じゃなくて『に』、だ。栄口すげー」 「いやー、それほどでも」 と言いながら、ふと。 思い浮かんだ、もう一人。 「「……や、うん」」 視線で会話をしてしまった。 「物凄く、叫んでる、よね」 「怒鳴ってる、が正しいかもね」 無駄に疲れたところでこの話題を発展させるのを、止めた。