100個で1組のお題 映画100 027:ボーイフレンド そりゃ、後ろから見たら区別は付かない。 この国では高貴な人やらそれ相応の地位についている人間は男女の関係なく髪が長いから。 手入れはしても、切らない。 最低でも腰に届いていなければいけない。そういう、暗黙のルールがあるから。 「また、勘違い、されまし、た」 「勘違い?」 「可愛い、女の子、って」 「ああ。髪の毛のせいですね」 俺がお仕えしているこの方はいわゆる王族というものの一員で。 よってほわほわとした淡い色彩の髪を長く長く伸ばしているわけで。 体の線も細く、雰囲気も柔らかくていらっしゃるので結構姫御子と間違われる。 見た目だけ、だ。 王子が王子であると知っている奴らのこの方への扱いは腹立たしいなんてものじゃすまない。 「で、も、孝介、さんは」 「ああ、俺は女王騎士の服を着てるんで」 「……それ、だけ?」 女王騎士団に女性が入れないという決まりは無い、というのを言いたいらしい。 が、女性騎士はそれはまあ美脚を晒す服を着ているのでまず間違うことは無い。 「それだけですよ。さあ、鍛錬の時間です、王子」 「はい」 ふわりと笑う、その表情が姫御子だと思われている証左だと知ったらいつも泣き顔になってしまうだろうか。 ようやく笑ってくださるようになったっていうのに。 「孝介、さん!」 「どうしました、王子」 「友達が、できまし、た!」 「それは良かったですね……って、王子、まさか友達って」 「あれ泉。え、王子様って」 「初めて、俺のこと、男だって、分かってくれまし、た!」 そりゃ浜田は腐っても陛下御用達の情報屋なんだから貴方が王子だってことぐらい知ってるでしょう、とか。 お前よくも王子をたぶらかしてくれたな真面目にしろよ、とか。 言いたいことは山ほどあったのだけれど。 「……良かったですね、王子」 「はい!」 笑顔一つでどうでも良くなってしまう辺り、俺も相当この人に甘かった。