100個で1組のお題 映画100 035:若者のすべて 探すものは元から無いもの、見つけられないもの、失われたもの。 稀にアーティファクトも。 「……金糸雀? 何だそれ」 「まあ、コードネームが金糸雀だからモノじゃないんだけどな」 「榛名、正しくはカナリー。高瀬、人だから」 H.A.T.カンパニーという名前の俺らが扱うのはいわゆる非合法モノだ。 外国、のとあるお偉方がバックについてるお蔭で政府には黙認されてる。 「カナリー、ねえ」 「コードネームカナリー。……歌いでもするんだかなんなんだか」 「あのさあ、二人とも。ちゃんと資料は読んでるよね? 俺が三日かけて作った傑作を」 「「読んでねえ」」 「……俺たまに本気で二人に殺意を覚える瞬間があるよ?」 「げ、んな怒るこたねえだろ!」 「てか厚すぎて読む気が」 「あと二時間で頭に詰め込まないと、どうなるか分かってるよね」 「「……はい」」 怒った眼鏡には適わない。 俺と高瀬は眠気を堪えながらA4にみっちり埋まった文字を頭に叩き込む。 で、疑問点を挙げていく。 「つまり、歌うんじゃねえのか」 「毒ガス感知って、死ぬんじゃないのか?」 「だろうね。でも彼は奇跡的に生き延びてる。なんでだと思う?」 コードネームカナリー。 詰まれた額は5。 単位は万じゃなく百でもなく千でもなく億。 「彼はね、嗜虐性を煽るんだ。人間の」 「は?」 「どういう意味だ?」 「女性が主のときはね、すごく大切にされる。母性本能を刺激するんだって」 「それとシ、なんとかってのとどう関係が?」 「なあ、それって好きな子苛めるガキと同じ?」 「榛名資料の読み直し。高瀬正解。そう。泣かせたくなるんだって。彼を。でも泣き止ませるのも楽しい。だから殺さない」 二人ともそういう子大好きだよね、と。 言われた瞬間、俺は真剣に資料を読み始めた。 というか絶対にあるはずのものを探し始めた。 「ああ、確かに。泣き顔そそるかも」 「おい、何枚目だよ」 「下から3枚目。うっわ、苛めたいなあ、これ」 「……そうかあ?」 「思いっきり懐かせたあとで苛めたら、絶対に楽しいって」 「悪趣味だね、高瀬」 「お前は良いお兄ちゃん役だろ、鬼畜眼鏡」 「本当に一回死んで見たらどうかなあ、高瀬」 高瀬と秋丸は放っておいて、ちゃんと資料を読んでみる。 ……笑わないって、え、こいつ16だろ? 泣く以外はしないって、どういう意味だよ。 「おい、こいつの取引先は?」 「? ああ、いつものオークションだけど」 「6で俺が買い取る。だからお前ら手伝え」 「「は?」」 「俺は人身売買だけはヤなんだよ!」 しかも子供相手は!