100個で1組のお題 映画100 037:俺たちに明日はない 「なあ、メーターぶっ壊れちまったんだけどちゃんと走れてるか、これ」 「……ぶっ壊れちまったんじゃなくて壊したの間違いだろ」 「そういえばそうかも! お、酔ってないな? 平気?」 「だい、じょぶ」 「しっかしいい加減しっつこいよなぁ、警備隊って」 「そりゃ、一国の要人を掻っ攫えばしつこくもなるだろうさ」 「は、ない、くん」 「お前あんま喋るなよ? 舌噛むぞ」 「あ、い」 「田島、後部座席の下だったな?」 「おうよ! 頼んだぜー、花井!」 砂漠と呼ぶにはあまりにも岩石が転がっている荒野を。 おんぼろジープは疾走する。 走り様はおんぼろではなく屈強な。 ブロロロロ、とこれまた力強い音と共に加速。 ただ、道が道なだけに下手をすれば舌を噛む恐れがある。 「国境越えたら少しはマトモになるかあ?」 「そうだな」 「距離、どれくらい詰める?」 「500で十分だ」 「りょーかい。三橋、吹っ飛ばされないように気ぃつけてな!」 こくこくと首を縦に振るのは、珠玉、と呼ばれていた社交界のある意味星。 後ろにぶら下がっている利権やら権力やらなにやら。 コレを目当てに群がる有象無象。 「カウント始めるぞ、3,2,1」 「いっけー!」 射術技官である俺と操縦技官である田島が三橋の友人になったのは、軍学校で。 国からの逃走を考えたのは戦術士官で既に国外逃亡を果たした泉と栄口で。 「うっわー、見えてなくても眩しいのな!」 「……遮光グラス二重の意味が理解できた」 開発技官の阿部と諜報部員の水谷の共同制作により、数々の逃亡お助けアイテムがこのジープ。 否、田島の相棒には溢れんばかりに詰め込まれている。 「は、ない、くん、だいじょう、ぶ?」 「ああ。お前は?」 「俺、は、だいじょうぶ、です」 「なら良い。田島、残りは」 「20キロ。ま、国境まであと1だから途中で阿部と水谷拾えば良いんじゃね?」 「……定員超えるだろ、間違いなく」 「三橋は誰かの膝の上! じゃんけんで勝った奴のな!」 目指す先は引退したお師匠様が暮らす国。