100個で1組のお題 映画100 047:ラストムービー 本編のメガホンを取るのはこれが最初で最後、と。 作る前に決めていた。 だから最初で最後の最高傑作。 でもってそいつも映画に出るのは最初で最後、というか。 これを機に芸能界から引退するという表明を出した。 まあ、こいつは俺とは違って。 引退せざるを得なかったのだけれど。 地球は狭く、宇宙は広い。 それは当たり前のこと。 太陽系以外の銀河との交流が盛んに行われるようになった近年。 地球では考えられなかった異種族も次々と現れるようになった。 ま、俺は先祖が地球生まれの月コロニー育ちで生粋の地球人だけど。 こいつは。 「レーン、お前まだ熱下がんねえのか?」 「は、い」 「おっかしいなあ、まだ安定期に入んねえの?」 「そ、んなこと、ない、です、けど」 ベッドで真っ赤な顔してうんうん唸ってるこいつは、異種族ってやつだ。 アンジェロってのが地球人が付けた呼称で、要するにある時期までは中性。 ある時期に突入して安定期を迎えた後に男か女になるって種族らしい。 その「ある時期」ってのが俗に言う思春期で。 パートナーの性と反対の性になるのが、通常らしい。 でもこいつは俺と大恋愛(そりゃそうだ。だってアイドルとしがない映像作家だ) したのに、安定期に突入したってのに、身体が変化しない。 大事件だ。だからこいつは引退を決意した。 「お、れ、変、なのかも、しれま、せん」 「なにが?」 「頭、ぼーっとして、身体、力入らない、のに」 「のに?」 「ハルナ、さん、に、抱きしめて、もらいたい、です」 熱で潤んだ両目でじーっと見つめられて(普段はない。すぐ逸らされる) そんな可愛いこと言われて理性の糸がもつはずが無い。 ギシギシ軋むパイプベッドの音と甘い声が鳴り止んで。 次に目を覚ましたら。 「……なんかお前綺麗になってねえ?」 「そ、です、か?」 「ほんとに天使落としたんだなあ、俺」 「……は、ずかしい、こと、言わないで、下さい」 とりあえず男で落ち着いたらしいけども。 今までのふわふわしたひよこみたいなのに加えて目を離すには厄介な色気が。 追加されて、俺の天使の安定期は終わったようだった。