100個で1組のお題 映画100 049:夜がまた来る 真っ黒な服を着たその人が来るのは、いつも夜。 でも新月の夜と満月の夜は来ない。 「今日も、お仕事、です か?」 注文されるのは、お酒じゃなくて蜂蜜入りの紅茶。 甘さが鈍ってたくさん糖分を吸収できるから、って、言ってた。 すごく、疲れてるみたい。 「ああ。俺を覚えてくれたんだ?」 「たっぷりの、蜂蜜、の人」 「当たり」 紅茶を一口啜ると、顔色が戻る。 ふうって、ため息。 すごく、綺麗な顔が、難しそうな顔になる。 「あ、の」 「?」 「考え、ごと、するときも、甘い、のが」 良いって、聞いた、から。 どうぞ、って。 飴玉、渡したら。 目、丸くして。 「……ありがとな。でもこれは今食わない」 「ど、して?」 「いつもより多いだろ、蜂蜜の量。これで足りるよ」 にっこり。 笑ってくれた顔が、綺麗で。 難しそうな顔じゃ、なくなったから。 「良かった」 俺、も、笑ったら、もっと笑ってくれた。 「ところで蜂蜜色の君の名前は?」 俺はハンターの高瀬って言うんだけど。 あ、蜂蜜は好物だけど今のところはまだお前を食うつもりはないから安心してな、って。 一気に、言われて。 良く、分からなかった、けど。 「廉、です」 「そっか。よろしくな」 「はい」 ハンターの高瀬さんって、ことは、分かった。