100個で1組のお題 映画100 051:許されざる者 田島の二つ名を聞いて絶句したのは、まあ、知り合ってから日が浅い俺だけだったけど。 「皆初めて本人を見たときは驚いたんだよ?」 「……栄口と西広も?」 「「俺を勘違いしてないかな?」」 「滅相もございません」 一騎当万。 一騎当千だって、鬼のように強い奴の代名詞なのに、それ以上。 普段の馬鹿やってる田島を見てたら欠片も想像できなかったけど。 「伝説にもなるねえ、それは」 「田島が有名なのは強いからだけじゃないよ?」 「へ?」 「一騎当万の田島、の他にもう一つ仇名があるんだよ」 「まあ、試合を見てたら分かると思うけど」 言われたら気になって仕方なくて。 もちろん近衛の皆が出てる試合は真剣に見てたけど。 全神経を集中させて見ていて気付いたことが、一つ。 「……田島って凄くない?」 「凄いよ」 「普通、あれ、鞘だけでダメージは与えられないよね?」 「うん。王子がお願いしたから」 「は?」 「王子がね、自分のために誰かの血を流すのは止めて下さいってお願いしたから」 「…………は?」 「その言葉に一番忠実なのが田島で、まあ、残りは命までは奪わないってとこかな」 一試合終わるごとに田島はすぐに王子がいる展覧席まで駆け上がっていって。 戒めが解かれていない自分の剣を恭しく献上する。 ……え、ちょ、マジかっこいいんですけど。 「ちなみにね、田島の剣の鞘の戒めは王子の髪なんだよ」 「どこの騎士だよ!」 「素でああいうことするから特に泉なんか張り合っちゃって大変なんだよね」 「だよね。あ、皆戻ってくるみたいだよ。明日の作戦再確認しようか」 えーと、田島が優勝しちゃったらもしかして求婚もしちゃうんじゃないの。 という言葉は言ったら瞬間に現実になりそうだったから黙っておくことにした。