100個で1組のお題 映画100 052:イノセンス 「香水のイメージモデル?」 「そ。イノセンスっていうのね、俺が指名されたんだけどもう一人欲しいなーってクライアントが」 「だめ。絶対にだめ。撮影現場に連れてきたを装ってなし崩し的に参加されるのはもっとだめ!」 「浜田さんのけちー。良いじゃん、絶対クライアントも気に入るって!!」 「大切な弟をこんな水モノな商売に就かせる気は無いの!!」 「絶対顔出しさせなきゃ良いじゃん!!」 「うちの可愛い廉の顔をなんで隠さなきゃなんないの!!」 「んじゃあ、俺と一緒に撮ってよ。顔出さなくて雰囲気だけで良いから。ね?」 「いーやーだー」 「今からオーディションしてる余裕は無いからRIOUの目で選んだ共演者ってプレッシャーかけられてんの!」 「お前の評判なんか地に落ちちゃえ!」 「ちょ、ひっでー! ねー、榛名さんも準さんもなんか言ってよ!」 ぷくーっと頬を膨らましてるのが今をときめく人気モデルなんて嘘だと思いたい。 けど非常に心から残念なことに、こいつがクライアントからも消費者からも支持を得てるのは事実だ。 クォーターであることを活かした体のバランス、顔の造作。 子供の頃は天使なんて言われてたのにいつの間にかギリシャの彫像にシフトチェンジ。 鍛えすぎてないしなやかな体躯と時に鋭利な印象を与える不思議な色の目は服を殺さず。 かといって自分を消しすぎることも無い。 ……褒めすぎた。 「つかギリシャまで廉連れてけると思ってんのか?」 「まあ、もうそろそろ夏休みだけどな」 「でしょ! 良いじゃん青い海でバカンス! 廉と一緒!!」 「「俺らの仕事じゃねえよ」」 ギリシャのビーチで夏休みってのも悪くないけど、あの可愛い弟を連れて行くのには抵抗がある。 第一俺はこっちの世界に廉を引っ張り込むつもりが全く無い。 あいつが望むのなら別だけど、それでも反対すると思う。 「お前ら浜田囲んで何してるんだ?」 「兄ちゃん! すっげーいいとこに!」 「? そういやお前共演者候補挙がったのか? 締め切り明日だぞ」 素材は悪くないけど華が無いからって弟を売り出す会社を作っちまった社長が。 俺を見て、にやりと笑った。 「ああ、そういうことか」 「ちょっと待って、そこで納得すんな呂佳さん!」 「良いじゃんお前の弟。クライアントの要望に利央より即してる」 連れて来いよ、の一言で。 ほぼ確定。 俺、逆らえなくないんだよ? でもRIOUが俺を指名してることで得る利益も大きいのは間違いなくて。 ギブアンドテイクの世の中だから、仕方ないとしか、言えなくて。 ああ、でも本当に。 「顔出し厳禁で情報流出も厳禁で廉に関する情報は全部非公開なら」 「それくらい簡単だろ。ま、探ろうとする奴らの数の予測、お前なら出来るだろうけどな」 「やった! 廉と夏のギリシャ! 地中海デート!!」 「誰がお前とデートなんかさせるかぁっ!」 パスポート持ってないから、の一言で断れない準備万端の俺が一番だめなお兄ちゃんだった。