100個で1組のお題 映画100 053:一年の九日 休戦協定、というのが一応結ばれている。 人間界でいうところの盆暮れ正月に当たるらしい時期の九日間だけ。 魂を狩って糧としている魔族と魂を守っている天使たちとの間に結ばれている協定だ。 馬鹿みたいにいがみ合ってるというか互いを消滅させるような激しい争いをしてるってのに。 この休戦協定の期間に一秒でも突入した瞬間に手を引いて。 互いの傷を癒しあったりも、する。 「お前のとこの副官容赦なさすぎだろ」 「あ ご、めんな さい」 しゅんと項垂れつつも傷を癒す光を耐えさせない純粋無垢箱入り天然培養は、まあそのなんだ。 俺の、だ。 『その傷の手当てでうちの上官独占できる口実ができて良かったじゃないですか大佐殿』 目が全然笑ってない笑顔を向けて戦況を報告しに行った背中が見えなくなってから、ようやく息を吐き出せた。 「お前が謝る必要はねえけど」 「で も」 「俺も本気出してたからな。お互いさまってやつだ」 ふわふわの髪の毛に手を突っ込んで撫でればうひ、と小さく笑みをこぼす。 背中で折りたたまれている翼も小さくパタパタ動く。 ……ちょっと可愛い。 けど血色が若干悪い。 「にしてもお前最近ちゃんと栄養補給してんのか? つか俺に治癒なんてかけてる場合じゃないだろうが!」 「ひ ぅ」 「強制的に俺の精気食わせるぞ。口あけ「何往来で天使が魔族襲ってんですか」 治りきっていない傷がある脇腹(それもこいつが付けた!)の上を思いっきり踵で踏み抜いて。 「まずは交換日記からって言ってるでしょう? 大佐殿」 「て、っめぇ」 「俺が席を外してる間にお誘いがかけられない大佐殿にはそれで十分です」 俺のを横抱きにしてばっさばっさ派手に翼を広げて雲の下へ。 「……なんだ、また逃げられたのか?」 「うるっせえよ!」