100個で1組のお題 映画100 063:野獣たちの掟 刀、も盾、もあるものがなくては刀としても盾としても生きていけない。 力を使った後は特に「それ」を本能的に欲する。 「お前いつまで貪ってんだこの馬鹿!」 「ってぇっつーの!」 思いっきり頭を叩いて腕の拘束が緩んだ隙に今度はその隙間に結界を生じさせる。 守るためではなくて弾き飛ばすための。 腕力では刀に劣る盾が刀に対抗するための手段の一つだ。 「三橋、干からびてないか?」 「ぅ、あ 準 さん」 くたりと力が抜けてしまっている体をよいしょと抱き上げて変な形で伸びている榛名を見下ろす。 肌は上気しているものの、月色の小袿に大きな乱れはない。 こいつはがっつくタイプだけど涙を延々と流させる方が好きなタイプでもある。 「おまっ、今からメインディッシュだっつーのに!」 「そんだけ戻ってれば十分だろうがこの馬鹿」 「馬鹿じゃねぇ! それにようやく食いどきになってきたんだぞ!」 「黙っとけ」 クッションのように膨らませていた結界を一瞬だけ解除して榛名を閉じ込める。 「誰か刀殿を丁重にお送りしといてくれ」 ちょい、と爪先で蹴飛ばせばころころと開け放ったままの戸から庭に転げ落ちる。 石の力を借りなければ結界が張れない榛名に俺の結界は壊せない。 ぎゃあぎゃあ騒いでいるんだろうけれど、音が漏れるような柔な造りはしていない。 「大丈夫か、三橋」 「っ あ、はい」 離れを結界で守り直して、奥の間の布団に小柄な体を横たえる。 ぱさっと布団を肩まで掛けて、傍らに俺も膝をついた。 泣きすぎて腫れてる瞼が痛々しい。 そっと目元に唇を寄せて舐めれば、じわりと。 身の内に染みる、甘露。 これが、俺や榛名。 その他刃と呼ばれる奴らの力の源だ。 こいつの体液が俺らの糧。 もちろん普通に食事はする。 それは生命維持のため。 「足り ます か?」 「だから干からびるだろ、お前。これで十分だ」 もっともっとと本能は欲しがるけれどさんざん榛名に無体なことをされたこいつに。 これ以上涙を流させるわけにはいかない。 本来は一族の未通の姫だけが持って生まれていたらしいこの体質をなぜだか。 生まれた時から持っているこいつ。 ちなみに本家の姫様は刃の性質を得ている。 「お前の意思で破れる結界張っとくから休んでろ。な?」 今現世に降りてる奴らが帰ってきたらまたこいつは。 ほんの一口の涙で事足りるはずなのに、無償で投げ出す。 「あ の」 「どうした?」 見上げる目に笑いかければ、ほわりと表情を崩して。 「一緒 に」 「……しょうがないな」 蜜月様自ら俺に抜け駆けをしろと誘ったんだから、俺のせいじゃない。 重袿と表着を脱がせて単と白衣だけの細い体を抱きこんで、目を閉じる。 本当はこれだけで充電されるから、こいつを抱き枕にする奴が多いのもある意味事実だった。